今日は、医師にとって絶対に避けては通れない「医師賠償責任保険」についてのお話です。
この記事では、
- 医師(勤務医、後期研修医)は医師賠償責任保険に入るべきか?
- 医療訴訟の賠償金(賠償額)の相場は?
- 医師賠償責任保険を比較した結果、おすすめの会社とプランは?
といった疑問にお答えします!
医師賠償責任保険とは?
医師賠償責任保険とは、医療事故に関し、医師に過誤があり、賠償責任が生じたとき、これを補償するための保険商品です。
ウィキペディア(Wikipedia)より
皆さんは、医師賠償責任保険には加入していますか?
というドクターもいるかもしれませんが、昨今、病院または医師が、患者やその家族から訴えられる事案(医療訴訟)は増えています。
マスコミでも、多くの医療ミス、医療訴訟のニュースが報道されています。
医療ミスがないにもかかわらず、訴えられて医療側が敗訴するという不条理な判例(いわゆる”トンデモ判決”)も増えています。
さらに、医療訴訟の賠償請求額も年々、増加傾向にあります。
わたし自身も、25年の医師生活において何度か危ない目に遭いました。
幸いにも患者さんから訴えられたことはありませんが、「いつ訴えられてもおかしくない」と思っています。
医師が業務上の過誤によって損害賠償責任を負ったときに、助けとなるのが医師責任賠償保険です。
もちろん私も加入していますが、保険料がはっきり言って高いです(外国と比べると日本は安いそうですが・・)。
さらに、(当たり前ですが)基本的に医師賠償責任保険は掛け捨てです!
ですので、資産形成(節約)を考えたとき、同じ条件ならば、必要経費として保険料が一番安いところに申し込むのがベストです。
でも、「忙しいので、どの会社やプランがいいのか検討しているヒマがない」という医師がほとんどでしょう。
そこで、
研修医(後期研修医)に医師賠償責任保険が必要か
Q.研修医(後期研修医)は医師賠償責任保険に加入すべきか?
私の経験上、たとえ完璧な医療を提供していたとしても、患者さん(あるいはその家族)から訴えられる可能性はあります。
私自身、これまでに3回、トラブルを経験しました。
【ケース1】最初は、主治医をしていた患者さんが、内視鏡検査の偶発症で死亡したときです。がんの患者さんだったのですが、「検査で死ぬとはどういうことか?」と家族の怒りは相当のものでした。何度も説明の場を設け、報告と謝罪を繰り返しました。
【ケース2】2回目は、自分が手術した患者さんが、術後の合併症で突然死したときです。剖検もさせていただき、家族に何度も説明しましたが、「医療ミスではないのか」と詰め寄られました。予想される合併症でしたが、術前に「死に至ることがある」と説明することの大切さを痛感しました。
【ケース3】3回目は、初回のがんの手術で病変を取り残したため、再手術が必要となった症例です。再手術のあと、しばらくしてがんの再発で亡くなったのですが、弁護士をたてての話し合いとなりました。幸い示談となり、訴訟には至りませんでした。
いずれも幸いなことに訴えられることはありませんでしたが、いつ訴訟となってもおかしくない事例でした。
このような経験から、研修医をふくめて勤務医には(とくに検査や治療といった偶発症や合併症を伴う手技を行う医師には)医師賠償責任保険は必須だと思います。
医療訴訟の賠償額の相場
Q.医療訴訟の賠償額の相場はいくら?
さて、医療訴訟の賠償額の相場はいくらなのでしょうか?
弁護士の総合検索サイト『あなたの弁護士』から引用させていただきます。
医療訴訟の賠償額は、治療費など実際に支払った費用(積極的損害)と収入面での損害(消極的損害)、精神的苦痛に対する損害賠償である慰謝料の3種類に区分されます。
医療過誤事件の内容や損害の程度にもよりますが、患者が死亡した場合には1億円以上の賠償額が認められるケースもあります。
つまり、損害賠償額は損害の程度によって異なりますが、積極的損害、消極的損害、および慰謝料を合計すると、かなり高額になるということです。
実際に、1億円をこえる損害賠償が請求された医療訴訟の例が報告されています。
このような高額賠償訴訟の増加をみると、やはり最低でも1億円以上の保険プランに入っておく必要性を感じます。
医師賠償責任保険の比較:値段やプランは?
Q.医師賠償責任保険にはどんな保険会社とプランがあるの?
医師賠償責任保険は、医療事故に関し、医師に過誤があり、賠償責任が生じたとき、これを補償するための保険です。
一般的に、日本国内(常勤および非常勤・アルバイト先の病院)で行ったすべての医療行為(ただし美容のみを目的としたものを除く)が対象となります。
保険のプランは各保険会社によって違いますが、支払限度額が1事故につき3千万円、5千万円、1億円、2億円、3億円などの商品があります。
保険料は支払限度額によって異なりますが、年間でおよそ3~6万円の範囲です。
現在、医師賠償責任保険をとりあつかっている保険会社には、
- 東京海上日動
- 三井住友海上
- 損保ジャパン
- 日本興亜損保
- 株式会社カイトー
- アリコジャパン
などがあります。
勤務医・研修医におすすめの医師賠償責任保険
Q.勤務医・研修医におすすめの医師賠償責任保険は?
医師賠償責任保険の保険料は、個人で加入するよりも、民間医局、エムステージなどのエージェント、あるいは学会や医師会を通して加入したほうが、団体割引が適用されて安くなります。
おもな団体割引サービスの保険料(年間)について、スタンダードな2つのタイプの商品を比較した結果を表にまとめます。
1億円(限度額/1事故) | 2億円(限度額/1事故) | |
民間医局 | 41,660円 | 47,710円 |
エムステージ | 40,660円 | 51,570円 |
カイトー(各種学会) | 40,660円 | 51,570円 |
日本医師会 | 40,000円(11,000円(30歳以下)、15,000円(研修医)) | なし |
この中で、学会割引(カイトー)の場合には特定の学会に所属することが必要です。
医師会の賠償責任保険の場合には、日本医師会に入会しないといけません(入会手続きが煩雑で、研修医を除いて会費が必要となってきます)。また、プランが限度額1億円(1事故)の1種類しかありません。
民間医局の場合、無料登録するだけで誰でも簡単に申し込みできますし、支払い限度額2億円のプランが年間47,710円(20%OFF)と他社と比較して最も安くなります。
また、幅広い限度額の4つのプラン(下表)から選ぶ(あるいは、途中から変更する)ことができます。
ちなみに、民間医局の医師賠償責任保険加入者、約14,000名のうち、最も加入数が多いのは、この2億円のプランだそうです。
これで、年間の保険料が3,860円お得になりました。
たいした額ではありませんが、10年間ではおよそ4万円もの節約となります。
たとえ1円でも節約できるところは節約することが大事です!
民間医局から医師賠償責任保険に申し込む方法
申し込みはとても簡単で、書類の郵送など必要ありません。
まず、こちらの民間医局の保険申し込みサイトから「無料会員登録して保険に申し込み」ボタンをクリックします。
手続きの流れとしては、以下の通りです。
まずは民間医局の会員登録をしてからログインします。
次に必要事項を記入し、指定された口座に振り込みが完了すると、申し込みが完了します。
わずか5分足らずで終わります。
私のおすすめする年間保険料47,710円(20%オフ)の保険プランでは、1事故で2億円(保険期間中、最大6億円)までの補償があり、免責金額(自己負担しなければならない金額)の設定はありません。
また常勤の病院での事故だけでなく、アルバイト(外勤)先での事故も補償されます。
外勤・アルバイト先の病院での医療事故(医療過誤)は、通常、医師個人の責任になることがほとんどですので、この点からも安心です。
とくに、アルバイトをはじめる後期研修医の皆さんには、早めに医師賠償責任保険に加入しておくことを強くおすすめします。
まとめ
昨今、医療訴訟における賠償請求額が高額となる例が増えており、1億円をこえる判例もでてきています。
このような社会情勢を考えると、不安をかかえながら診療するよりも、やはり医師賠償責任保険(できれば限度額2億円のプラン)に入っておくことをおすすめします。
ただ、保険料自体も結構高いので、できるだけお得なプランに加入したいですね。
ドクターP
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